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TAKAHIRO

2026/8/26 3:14:03

AIは役者の仕事を奪うのか

中国のあるプラットフォームの責任者が、こう言っている。

AIドラマに演技力は要らない。顔は純粋に素材だ。

褒め言葉ではない。仕事の説明だ。

そして、この一文でほとんど言い尽くされていると思う。


顔を貸す人たちが、もう現れている

深センの「ActID」というサービスがある。2026年3月に始まった。約800人が登録し、そのうち300人ほどが、自分の顔をAI制作に貸し出すことに同意している。

報酬は1話あたり99〜500元。日本円で2,200円から1万円ほど。別のプラットフォームでは15ドルから700ドルの幅で、顔の種類や使われ方の範囲を本人が決めて値段をつける。

背景にあるのは、中国のマイクロドラマの爆発だ。2026年の第1四半期だけで12万8,000本が公開され、その95%以上が制作のどこかでAIを使っている。

なぜ完全なAIの顔ではなく、生身の人間の顔を借りるのか。ActIDの担当者はこう説明している。魅力的な主役級の顔や、高齢者のような特徴のある顔は、AIだけでは十分に作れない。だから、実在の顔が要る。

つまりこういうことだ。演技は要らない。顔だけが要る。

そして無断で使われるケースも起きている。ByteDanceは2026年初めから、許可のないディープフェイク動画を8万5,000本以上削除している。顔を貸す市場は、盗まれる市場への対抗として生まれた側面もある。

これは俳優の話に見えて、たぶん俳優だけの話ではない。


それでも、まだ守られている場所がある

一方で、逆向きの力もはっきり働いている。

2026年6月、アメリカの俳優組合SAG-AFTRAが新しい協約を批准した。賛成91.4%。この協約では、AI俳優を使えるのは、生身の俳優やその俳優のデジタル分身と比べて「明確な付加価値」がある場合に限られる。組合はこの条文について、AIの使用は事実上ごく一部の例外に限られると説明している。

AI「俳優」のティリー・ノーウッドは、2025年に発表されて猛烈な反発を受けた。2026年には長編映画の主演が発表され、組合は「人間の芸術性を切り下げるものだ」と非難した。

だからこの問いに、単純な答えはない。


減るのは「仕事」ではなく、「名前のない仕事」だ

二つの事実を並べると、境目が見えてくる。

守られているのは、名前のある俳優だ。組合があり、契約があり、代わりがきかないと認められている人たち。

消えていくのは、名前のない仕事のほうだ。エキストラ。通行人。台詞のない役。顔だけが必要とされる仕事。中国のマイクロドラマで起きているのは、まさにそれだ。「演技は要らない、顔は素材」という言葉は、そこを指している。

僕は、俳優という職業がなくなるとは思っていない。ただ、入口が細くなるとは思う。無名の人が現場に入り、経験を積み、名前を得るまでの階段。その一段目が、いちばん先に削られていく。

これはたぶん、俳優だけの話ではない。


それで、この場所は何をやろうとしているのか

さっき書いたことに戻る。消えていくのは、名前のない仕事だ。無名の人が中に入るための、一段目から削られていく。

だったら、入口しかない場所を作ればいい。

そう考えて作ったのがここだ。審査はない。誰でも出せる。掲載料も独占契約もない。権利は作った人のままで、合わなければ自分で消せる。上映作品を決めるのは、運営でもアルゴリズムでもなく、観た人の投票だ。

これまで、業界に入るための階段は人が管理していた。事務所、オーディション、人脈、予算。その一段目が消えていくのなら、誰の許可もいらない階段を、別に作るしかないと思っている。

そして、同じことをキャラクターの側にもやる。

いまAI映像で普通に行われているのは、作品ごとに顔を生成して、終わったら捨てることだ。顔は素材で、素材は使い捨てられる。中国で起きていることと、原理は変わらない。

ここでは逆にする。一度作ったキャラクターを、いろんな作品に出し続ける。監督が違っても、ジャンルが違っても、同じ顔が出てくる。回を重ねるうちに見覚えができて、「この子が出てるやつ」で観てもらえるようになる。

AIのキャラクターにも、経歴を持たせる。

監督にも、キャラクターにも、やっていることは同じだ。積み重ねが記録に残る場所を作る。名前というものは、そうやってしか生まれない。

だからキャラクターの顔とターンアラウンドは、誰でも無料でダウンロードできるようにしてある。あなたの作品に、そのまま出演させてほしい。使い捨てにせず、育ててほしい。

いま、彼らにはまだ名前がない。掲示板で募集している。


前例はある。ただし、正確に言っておきたい

この手の話をすると、初音ミクとキズナアイが引き合いに出される。生身の人間ではないのに、名前があり、ファンがいて、経済が回っている——たしかにそのとおりだ。

ただ、正確に言っておきたい。どちらもAIではない。

初音ミクは2007年に出た音声合成ソフトのキャラクターで、歌わせているのは人間だ。キズナアイは名前にAIと入っているが、中で声を当てているのも、動きをつけているのも人間である。

だから「AIの成功事例」として持ち出すのは、間違っている。僕も最初はそう書きかけて、調べ直してやめた。

それでも、この二つが証明したことがある。人は、生身でない存在にも本気で愛着を持てる。そして、その愛着は技術が作ったのではなく、ファンが作った。ミクに歌わせた人、絵を描いた人、ライブに行った人。あれは、みんなで育てたキャラクターだ。

僕が賭けたいのは、そこだ。技術で人気者を作れるとは思っていない。育てる場所があれば、人気者は生まれると思っている。

だからこのサイトは、視聴者の投票で上映作品が決まる仕組みにした。育てるのは、運営ではなく観る人だ。


批判については

映画業界や芸能事務所から批判されるだろうと思っている。それは理解できる。人の仕事が実際に減るなら、怒るのは当然だ。

「僕がやらなくても、誰かがやる」——そう言いたくなることもある。でも、それは何かをやっていい理由にはならない。誰かがやるからこそ、どうやるかが問われるのだと思う。

やらないことは規約に書いてある。他人の顔を無断で使うことも、そのほかの権利侵害も禁止で、通報があれば消す。当たり前のことなので、ここでは並べない。

そのうえで、決めていることが二つある。

AIであることを隠さない。 キャラクターのプロフィールにも、SNSのアカウントにも、AIで生まれた存在だと書いてある。黙っていたほうが数字は伸びる。AIだと分かった瞬間に、人は手を止めるからだ。それでも書いておく。

作った人の権利は、作った人のものにする。 投稿作品の著作権は投稿者に帰属する。独占契約も掲載料もない。他の場所での公開も自由だ。集める側が権利まで持っていく形にはしない。

多くの労働がなくなっていく、と僕は思っている。

これは遠い未来の空想ではない。この記事で書いた中国の話が、すでにその入口だ。1話2,200円で顔を貸す人がいて、そこでは「演技は要らない」と言われている。仕事が丸ごと消えたわけではない。だが仕事の中身が、演じることから、顔を貸すことへ削られている。置き換わるとき、たいていはこういう順番で起きる。まず中身が痩せて、それから席がなくなる。

どこまで進むのか、何年かかるのかは分からない。そこは誰にも分からない。ただ、方向はもう見えていると思う。

怖い話だと思う。同時に、人が労働から解放されて、本当にやりたいことをやれる未来の入口でもあると思っている。どちらに転ぶかは、たぶんこれから決まる。


一緒にやる人を探しています

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未経験でかまいません。 僕自身、映像制作の知識はゼロから始めました。

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登録は無料です。審査もありません。作った作品の権利はあなたのままで、合わなければいつでも削除できます。

キャラクターの素材も、名前のない俳優たちも、すべて置いてあります。

使ってください。そして、育ててください。

studiorjapan.com


出典

  • 中国の顔ライセンス市場(ActID/New Claw、報酬額、登録者数、ByteDanceの削除件数)

GIGAZINE「自分の顔をAIにレンタルする行為が中国で流行」2026年7月28日
https://gigazine.net/news/20260728-china-people-renting-face-to-ai/

  • SAG-AFTRA 2026年TV/劇場用協約の批准(賛成91.4%)とAI条項

Variety「SAG-AFTRA Members Approve Four-Year Deal With AI Terms and Pension Merger」2026年
https://variety.com/2026/film/news/sag-aftra-ratification-ai-pension-merger-1236767288/

  • ティリー・ノーウッド主演長編『Misaligned』と組合の反応

Variety「Tilly Norwood Movie Rekindles Hollywood Concerns Over AI 'Actor'」2026年
https://variety.com/2026/film/news/tilly-norwood-new-movie-hollywood-concerns-ai-actors-1236806826/

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