あらすじ
お盆の夜の訪問者
DIRECTOR: TAKAHIRO
Chapter 1(父の視点につながる導入)▾
俺が子供の頃、毎年お盆になると、親に連れられて父の田舎である兵庫県朝来市に帰省していた。そこには祖父と祖母が住んでいた。 お盆の時期になると、家族は二階の和室に布団を敷き、川の字になって眠る。 しかし夜が更け、家族が寝静まる頃になると、不思議なことが起きた。 一階の仏壇がある仏間から、 「チーン…」という鐘の音や、まるで木魚を叩くような音が聞こえてくるのだ。 まるで先祖たちが帰ってきて、仏間でどんちゃん騒ぎをしているかのような気配だった。 そんなことが、お盆になるたび毎年のように起きた。 朝になると姉が 「昨日、音聞こえた?」 と聞いてくることがよくあった。 子供の頃の俺にとって、田舎の家はどこか不思議で、少し怖い場所だった。 そんな我が家は、昔から怪談話をするのが好きな家族だった。 霊感があるという祖母や父の話を、子供の頃からよく聞かされていた。 そんなある日の夜、父が言った。 「裏山にある墓、夜に見に行ってみるか?」 俺たちは肝試しのような感覚で、 父、姉、弟、そして俺の四人で、真夜中の竹藪の坂道を登り、先祖の眠る墓へ向かった。 墓は昼間とは違い、不気味な静けさに包まれていた。 だが、そこでは何も起きなかった。 問題は帰り道だった。 墓からの帰り、坂道の横を流れる細い小川から、ふと視線を感じた。 嫌な予感がしてその方向を見ると—— そこには、生首が落ちていた。 目を閉じたまま、静かにそこにある。 横を歩く父に言おうと思ったが、恐怖で声が出なかった。 もう一度よく見ると、それは人の頭ほどの大きさの岩だった。 石だったと分かり、少し安心したものの、恐怖は消えなかった。 俺たちは帰り道、誰一人として口を開かず、そのまま家に戻った。 明かりのある部屋に戻り、ようやく落ち着いた頃、 俺は家族に墓で見た生首の話をした。 兄弟たちは笑った。 だが、父の反応だけは違った。 父は静かにこう言った。 「実はな……俺も見てたんや。」 しかも父が見たその生首は、 父の方を見て、大きな目をカッと見開いたという。 俺が見たときは目を閉じていたのに、なぜなのか。 その時は分からなかった。 だが、この出来事が、 数年後に父から聞くことになる、ある話へと繋がっていくことになる。 それは、父が中学生の頃に体験した出来事だった。
Chapter 2(父の先輩の視点)▾
たしか俺が高校生になった頃だった。 ある夜、父の晩酌に付き合っていたときのことだ。 父がふと、こう言った。 「とっておきの怖い話があるんや。聞くか?」 好奇心旺盛だった俺は、すぐに答えた。 「聞きたい!」 しかしその時はまだ、この話が想像を遥かに超える、 おぞましい話だとは思ってもいなかった。 これは父が中学生だった頃の話だ。 兵庫県朝来市。 父は和田山中学校に通っていた。 その学校には、父がよく面倒を見てもらっていた先輩がいた。 しかし、その先輩の家は普通の家庭ではなかった。 父親は極端な亭主関白で、体罰は日常だったという。 酒を飲んでは暴れ、子供に手を上げる。 母親はそれを止めることも出来ず、ただ怯えて泣いているだけだった。 そんな家庭で育った先輩は、やがて学校に来なくなった。 農家の家だったため、 先輩は奴隷のように働かされ、学校にも行かせてもらえなくなったのだ。 そして、ある冬の夜。 何かをきっかけに父親を怒らせてしまった先輩は、 真冬の吹雪が吹く真夜中に裸にされ、隙間風の入るボロボロの納屋に鎖で繋がれた。 凍えるような寒さの中、先輩は一人で考えていた。 普通に学校に通って、 友達と遊んで、 勉強して—— そんな普通の生活を送りたかっただけなのに。 なぜ自分だけ、こんな人生なのか。 涙が止まらなかった。 そして—— 次の日の朝。 父親が納屋を見に行くと、鎖は外され、息子の姿は消えていた。 その噂は瞬く間に村中に広がった。 村人総出で捜索が始まった。 父もその話を聞き、先輩の家へ向かい、周辺を探し回ったという。 その時だった。 近くを走る汽車が、普段は鳴らないはずの汽笛を、 けたたましい音で鳴らし始めた。 嫌な予感がした父は、全速力で線路へ向かった。 そこには数人の村人が集まり、騒ぎになっていた。 「人が轢かれたぞ!」 目に飛び込んできたのは—— 真っ赤な血に染まった先輩の片腕。 その先には、内臓が飛び出た胴体。 骨の見えた足。 先輩の身体は、無残にもバラバラになっていた。 村人たちは呆然と立ち尽くしていた。 そんな中、誰かが叫んだ。 「頭がない!頭が見つからない!」 父は、震える足で頭部を探し始めた。 そして、線路から100メートルほど離れた草むらで—— 先輩の頭を見つけた。 父が顔を近づけたその瞬間だった。 目を閉じていたはずの先輩の目が—— カッと見開いた。 血走った目で、父を睨んだのだ。 その瞬間、父は一生消えない恐怖を感じたという。
Chapter 3(村人の視点)▾
息子の死を聞いた母親は、真っ先に線路へ向かって走った。 そしてその惨状を見た母親は、完全に正気を失ってしまった。 「私のせいだ……私のせいだ……」 そう呟き続ける日々が続いた。 葬儀が終わり、しばらく経ったある日。 今度は母親が失踪したという噂が村に広がった。 その夜、村人たちは懐中電灯を持ち、捜索を始めた。 一人の村人が言った。 「もしかしたら……息子の墓にいるんじゃないか」 竹藪の真っ暗な道を、松明を持って墓へ向かった。 そして墓にたどり着いた時—— ザンバラの髪。 ボロボロの爪。 泥だらけの女。 息子の墓の前で、膝をついて泣いている。 近づいた村人が見たものは—— 墓石を、長い舌でベロベロ舐め回す妖怪だった。 目が合った瞬間、 「みーたーなー」 そう言って追いかけてきた。 村人は必死に山を駆け下りた。 すると前方に一軒の民家の明かりが見えた。 助けを求めてドアを叩く。 すると中から老婆が出てきた。 「こんな夜中にどうしたんだい?」 事情を話すと、老婆は笑って言った。 「それは大変だったねえ。ちょうど夕飯ができたところだ。中で食べていきな」 居間には老人が座っていた。 食卓を囲んだが、会話はなかった。 不気味な沈黙。 村人が帰ろうとした瞬間、 「待ちなさい」 老婆が言った。 「風呂が沸いてる。入っていきなさい」 疲れ切っていた村人は、風呂に入った。 そして眠ってしまった。 目を覚ました時—— 冷たい。 臭い。 暗い。 そこは肥溜めの中だった。 必死にもがき、なんとか外へ出る。 外に出て見たものは、 笹の葉に並べられた泥団子。 そして木の影から聞こえる笑い声。 振り返ると、二匹の狐がこちらを見ていた。 「……化かされた」 狐は、すっと消えた。 これは1960年代、兵庫県朝来市で起きた話だ。 私が父から聞いた、田舎の怪談である。 父はもうこの世にはいない。 だが、父から聞いたこの話を、 私はこうして映像として残そうと思う。 あの夜、小川で見た生首も—— 父の先輩のものだったのかもしれない
キャラクター
作中に登場するキャラクター一覧。
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